「確定申告の際に、税金を少しでも安くしたいけど、青色申告って難しそう…」そんな悩みをお持ちではありませんか?
本記事では、青色申告に変更することで得られるメリットや手続きについて解説します。
白色申告との違いを比較しながら、青色申告の具体的なメリットやデメリット、変更手続きについて分かりやすく説明します。
青色申告の対象になる所得に関しては下記記事でご紹介しております。
確定申告の青色申告の対象になる所得とは?
白色申告から青色申告に変更すると何が変わる?
個人事業主やフリーランスの方にとって、確定申告は避けて通れない手続きです。
申告方法には、青色申告と白色申告の2つがあり、それぞれに特徴があります。
青色申告は、複式簿記による帳簿作成が求められ、書類作成の手間はかかりますが、税金面で有利な点がいくつかあります。
一方、白色申告は、簡易な帳簿で申告できるため、書類作成が簡便です。
青色申告を選択した場合、以下のメリットが得られます。
- 青色申告特別控除
最大年間65万円の所得から控除できます。
これは、青色申告を選択した事業者だけが受けられる大きなメリットです。 - 減価償却資産の特例
パソコンや家具などの事業用資産を、一定期間にわたって費用計上できます。
これにより、利益を圧縮し、税金を抑えることができます。 - 小規模企業共済の掛金控除
小規模企業共済に加入した場合、掛金を所得から控除できます。
これは、老後の生活資金の準備をしながら、税金対策もできる制度です。 - 土地建物等の譲渡所得の特別控除
土地や建物を売却した場合、一定額の譲渡所得を控除できます。
これは、不動産売却による税負担を軽減できる制度です。
一方で、青色申告には、以下のデメリットもあります。
- 帳簿の作成が難しい:複式簿記の知識が必要となります。
簿記の知識がない場合は、専門家への依頼が必要となる場合もあります。 - 書類作成が手間がかかる:提出する書類が多くなります。
申告期限までに必要な書類を揃えるためには、時間と労力を要します。
白色申告は、帳簿の作成が簡便なため、書類作成の手間を軽減できます。
しかし、青色申告のメリットを受けることはできません。
白色申告のメリットは以下のとおりです。
- 帳簿の作成が簡単:簡易な帳簿で申告できます。
簿記の知識がなくても、比較的簡単に帳簿を作成できます。 - 書類作成が手間がかからない:提出する書類が少なく済みます。
申告に必要な書類は、青色申告に比べて少ないです。
白色申告のデメリットは以下のとおりです。
- 青色申告のメリットを受けられない
青色申告特別控除や減価償却資産の特例などのメリットは受けられません。
税金面では不利になります。
青色申告と白色申告は、それぞれメリットとデメリットがあります。
事業内容、収支状況、時間的余裕などを考慮し、どちらが自分に適しているのか判断する必要があります。
必要であれば、税理士などの専門家に相談することも有効です。
青色申告と白色申告の違いを徹底解説
ここでは、先述した青色申告と白色申告のメリット・デメリットに加え、両者の違いを徹底解説いたします。
税金面での違い
青色申告は、青色申告特別控除と呼ばれる制度により、控除を受けることができます。
この控除を受けるためには、青色申告の承認を得て、一定の要件を満たす必要があり、承認を受けるには、所轄の税務署に事前申請を行う必要があります。
一方、白色申告は、青色申告特別控除などの特例を受けることができません。
しかし、事前申請なしで利用できる申告制度です。
事前申請の必要性の違い
確定申告の対象となる年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告が認められます。
事業を開始したばかりの場合は、事業開始から2か月以内に申請書を提出する必要があります。
被相続人の事業を相続によって引き継いだ場合は、相続開始日を基準に以下の期間内に申請書を提出する必要があります。
- 相続開始日が1月1日から8月31日までの場合: 死亡日から4か月以内
- 相続開始日が9月1日から10月31日までの場合: 当該年の12月31日
- 相続開始日が11月1日から12月31日までの場合: 翌年の2月15日
青色申告から白色申告への変更を希望する場合は、翌年の3月15日までに「青色申告の取りやめ申告書」を提出することで、白色申告に戻すことができます。
白色申告は事前申請が不要です。
事業者は、規模や経営状況、税務に関する知識などを考慮して、どちらの申告方法が有利か判断しましょう。
青色申告と白色申告の事前申請の有無は次のとおりです。
- 青色申告: 確定申告の対象となる年の3月15日までに「青色申告承認申請書」の提出が必要
- 白色申告: 事前申請は不要
申請書類・方法・帳簿保存の違い
青色申告と白色申告は、申告方法や提出書類、帳簿の保存方法などが異なります。
青色申告では、最大65万円の控除を受ける場合、青色申告決算書を添付し、期限内に確定申告書の提出が必要です。
さらに、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。
優良な電子帳簿保存の要件は、国税庁のウェブサイトから確認できます。
10万円の青色申告特別控除を受ける場合は、青色申告決算書の貸借対照表の提出は不要です。
ただし、その他の要件を満たしていても、期限後の申告は自動的に10万円控除の適用となるため注意が必要です。
青色申告の提出書類は以下のとおりです。
- 確定申告書
- 青色申告決算書(貸借対照表と損益計算書を含む)
- 各種控除に関する証明書
- その他(届け出の内容に応じた補足書類など)
- ※65万円控除の申告をする場合は、e-Taxでの申告または優良な電子帳簿の保存が必要
白色申告の提出書類は以下のとおりです。
- 確定申告書
- 収支内訳書
- 各種控除に関する証明書
- その他(届け出の内容に応じた補足書類など)
記帳方法の違い
青色申告の控除を受ける場合、複式簿記を採用する必要があります。
複式簿記は、取引を複数の側面から捉え、それぞれの側面を借方と貸方の勘定科目を使って帳簿に記入する方法です。
例えば、現金で100円のペン(消耗品費)を購入した場合、費用(消耗品費)が発生したという側面と、現金が支出されたという側面の両方から取引を記録します。
複式簿記では、賃借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成することで、企業のお金の流れを明確に把握することができます。
一方、青色申告の控除を受けない場合や白色申告の場合は、単式簿記で記帳できます。
- 青色申告(控除あり):複式簿記(青色申告特別控除で10万円控除の場合は、単式簿記でも可)
- 青色申告(控除なし)/ 白色申告:単式簿記
単式簿記は、取引を1つの側面からのみ捉える記帳方法です。
現金の増減は現金出納帳、取引先別の売掛金の増減は売掛帳など、勘定科目別の帳簿に記録します。
例えば、現金で100円のペン(消耗品費)を購入した場合、単式簿記では、費用(消耗品費)が発生したという側面のみを記録し、現金で支払ったという側面は記録しません。
不動産所得に関する要件の違い
青色申告と白色申告では、不動産所得がある場合、適用される要件が異なります。
青色申告で控除を受けるには、不動産の賃貸事業が事業的規模であることが求められます。
具体的には、独立した貸家や建物賃貸が5棟以上、あるいはアパートが10室以上必要です。
一方で、事業所得と不動産所得の兼業の場合、不動産所得が事業的規模である必要はありません。
そのため、マンション1室からの不動産所得であっても、10万円の控除を受けることができます。
さらに、青色申告特別控除が認められる要件として、「賃貸料収入の状況、貸付資産の管理状況などからみて、これらの場合に準ずる事情があると認められる場合」があります。
例えば、駐車場経営では、5台分の駐車場がアパート1室に相当するとみなされます。
また、貸室と貸家の両方を所有している場合、2室を1棟相当とみなす場合もあります。
そのため、必ずしも「建物賃貸で5棟以上、もしくはアパートだけで10室以上」という条件に当てはまる必要はありません。
e-tax利用の可否
青色申告では、国税電子申告・納税システム(e-Tax)の利用が義務付けられています。
e-Taxを活用することで、確定申告書や貸借対照表、損益計算書などの作成・提出を効率的に行うことができます。
ただし、青色申告における65万円の控除を受ける場合に限り、e-Taxの利用が必須となります。
55万円または10万円の控除を選択する場合、あるいは白色申告を行う場合は、e-Taxの利用は必須ではありません。
- 青色申告(65万円控除): e-Taxの利用が必須
- 青色申告(55万円、10万円控除)、白色申告: e-Taxの利用は任意
青色申告のメリットを詳しく解説
青色申告は、白色申告に比べて申告書類の作成や帳簿の記帳が複雑になる一方で、多くのメリットがあります。
青色申告を選択することで、これらの優遇措置を受けることが可能になります。
- 青色申告特別控除が適用されます。
- 損益計算書を作成できます。
- 複式簿記による帳簿の作成が認められています。
- 事業所得で発生した損失を他の所得と損益通算できます。
- 税務上の優遇措置が適用される場合があります。
青色申告特別控除が受けられる
青色申告では、特定の条件を満たすことで、65万円、55万円、10万円の特別控除を受けることが可能です。
この特別控除は、青色申告を行う際の最大の利点と言えます。
家族の給料を必要経費にできる
青色申告では、家族に支払った給与を必要経費として計上できることも大きなメリットです。
しかし、この制度を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族であること
- その年の12月31日時点で、年齢が15歳以上であること
- その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専従していること
- 労務の対価として相当であると認められる金額であること
さらに、青色申告承認申請書に加えて、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。
この届出書には、給与の支払い方法や金額を記載する必要があるため、注意が必要です。
届出書に記載された方法で、記載された金額の範囲内で支払われたことを証明できる書類も必要となるため、提出前にしっかりと確認しておきましょう。
赤字を繰り越し・繰り戻しができる
青色申告では、事業所得などで赤字が発生した場合、その損失額を翌年から3年間繰り越すことができます。
これは、確定申告の対象となる年に発生した赤字を、将来発生する黒字と相殺することで、将来黒字となった年の税金を抑える効果があります。
さらに、青色申告者は、赤字を前年度にまで遡って繰り戻すこともできます。
前年度の事業所得などが黒字で、本年度の所得状況に赤字が発生した場合、本年度に生じた赤字を、前年度に生じた黒字と相殺することにより、前年度に納めた税金が還付される場合があります。
減価償却の特例を受けられる
青色申告では、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、その費用を一括で経費として計上することができます。
この特例により、事業者は税金負担を軽減できるメリットがあります。
ただし、この特例は、1事業年度における経費計上額が300万円を上限としています。
貸倒引当金の計上が可能
青色申告を選択すると、取引先の経営悪化などによる回収不能リスクに備え、売掛金、未収入金、貸付金などの事業上の債権に対する損失を事前に計上する「貸倒引当金」を計上できるという利点があります。
青色申告の個人事業主は、決算時に、当該年の12月31日時点における金銭債権の総額に対して、一括で5.5%(金融業の場合は3.3%)の金額を「貸倒引当金繰入」として経費に計上することができます。
一方、白色申告を行う個人事業主は、同年12月31日時点において、個別評価を行い、回収の見込みがないと判断される債権の金額に対してのみ「貸倒引当金繰入」が認められます。
青色申告のデメリット
青色申告は、多くの控除が利用できるため、節税効果の高い申告方法として知られています。
しかし、申告に求められる手続きの複雑さや、提出書類の多さなど、いくつかの課題も存在します。
青色申告には、いくつかの注意点があります。
- 申告に必要な書類が、白色申告に比べて多くなります。
- 申告の手続きは、白色申告に比べて複雑になります。
- 申告期限は、白色申告よりも短く、申告漏れや誤りのリスクも高くなります。
- 申告ミスによって、ペナルティが課せられる可能性も考慮する必要があります。
これらの課題を理解した上で、青色申告を行うか否かを判断することが大切です。
事前申請が必要
青色申告を行うには、所轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
申告手続きを怠ると青色申告の適用を受けられないため、注意が必要です。
提出期限は、原則として、その年の確定申告期限日(3月15日)までです。
事業を新たに開始した場合は、開業後2か月以内に申請書を提出する必要があります。
青色申告の承認を受けていた事業を相続によって引き継いだ場合、相続開始を知った日(被相続人の死亡日)から一定期間内に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
提出期限は、相続開始を知った日の時期によって異なります。
一度申請書を提出すれば、翌年以降は提出する必要はありません。
青色申告特別控除を受けるには複式簿記が必要
青色申告の特別控除は、65万円、55万円と大きな金額が受けられますが、その条件として、複式簿記による記帳が求められるケースがあります。
複式簿記では、取引内容を借方と貸方の両方に記録する必要があるため、ある程度の簿記知識が必要となり、負担に感じる方も少なくありません。
ただし、青色申告の控除額が10万円までであれば、複式簿記による記帳は必須ではなく、単式簿記で十分です。
簿記知識に自信がない方や、帳簿作成が難しいと感じる方は、クラウド会計ソフトなどのツールを活用することを検討してみてください。
これらのソフトは、会計処理を自動化したり、帳簿作成をサポートしたりする機能を備えているため、負担を軽減できます。
必要な書類が多い
青色申告を行うには、確定申告書の提出に加え、「青色申告決算書」の提出が必須です。
この決算書には、貸借対照表や損益計算書など、複数の書類が含まれており、作成には時間と労力を要します。
白色申告から青色申告に変更する手続き
青色申告を行うには、申告期限までに所轄の税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
承認が下りれば、その年から青色申告による確定申告が可能になります。
書類提出だけで手続きは完了しますが、複式簿記に不安がある場合は、事前に「freee」などのクラウド会計ソフトの導入を検討しましょう。e-Taxを利用する際は、管轄の税務署で発行されたICカードリーダーライターが必要です。
マイナンバーカードやマイナンバーの読み取り機能付きスマートフォンをお持ちでない場合は、ICカードリーダーライターの購入も必要です。
ICカードリーダーライターは、家電量販店やオンラインショッピングサイトで購入できます。
e-Taxの申請方法については、当サイト内の別記事で詳しく解説していますので、そちらも参考にしてください。
まとめ
青色申告は、白色申告と比較して、様々な控除を受けることができ、個人事業主にとって有利な申告方法と言えます。
しかし、申告に必要な書類の作成は、複雑な作業を伴うため、本業が忙しい方や、複式簿記に自信がない方は、書類作成に苦労してしまうケースも少なくありません。
簿記の知識に不安がある場合は会計ソフトを使用することをおすすめします。
「freee」は、日々の取引を記録するだけで、青色申告に必要な書類を自動で作成してくれるサービスです。
会計ソフトを利用したことがない方でも、簡単に操作できるので、簿記や会計の知識がなくても、安心して申告書類を作成できます。
あいせ税理士法人は「freee」の認定アドバイザーですので、青色申告をしたい際はぜひ弊社にご相談いただければと思います。
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