給与計算を自分でやりたい方は必見。給与計算は、手順がわかれば自分でできます。計算のポイントになるのは、社会保険料の計算方法と源泉徴収税額表の見方です。
本記事では、給与計算の流れについて解説します。計算過程における注意点についても紹介していますので参考にしてください。
※この記事は現役税理士の木住野祐希監修のもと作成しております。
給与計算に必要な書類やデータと手順
給与計算を自分でするためには、下記の5書類やデータを準備しておくことでスムーズに進められます。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
- 標準月額報酬表
- 源泉徴収税額表
- 住民税課税決定通知書
- 勤怠がわかるもの(タイムカードや有休申請書など)
勤怠がわかるものについては、役員しかいない場合にはタイムカードや有給申請書はないため、それ以外の4種類で計算します。
社会保険料を控除する
健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書をもとに、標準月額報酬表から該当する健康保険料と厚生年金保険料の額を控除します。
39歳までは「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の健康保険料率で計算し、40歳以上は介護保険料も控除するため「介護保険第2号被保険者に該当する場合」で計算します。
厚生年金保険料は年齢で料率に変更はないため、表のとおりに控除し完了です。
雇用保険料を控除する
雇用保険料の計算方法は、業種で料率は異なりますが、業種に合わせて従業員の自己負担分を計算し徴収します。
社会保険料とは異なり、入社1カ月目の新入社員の給与からも徴収します。計算の基礎となるものは給与額です。
給与額から社会保険料と雇用保険料を控除し該当する源泉徴収税額を控除する
給与額から社会保険料と雇用保険料を控除し、残った金額を参考に源泉所得税額表から該当する源泉所得税を控除します。
このとき、給与所得者の扶養控除等申告書の提出がある場合は、源泉徴収税額を甲欄で徴収します。
提出がない場合は乙欄での徴収です。源泉所得税額表には甲欄と乙欄以外に丙欄があります。丙欄とは日雇い賃金に対して徴収する税額です。多くの場合は、甲欄で計算できます。
源泉所得税の控除後に住民税を控除する
住民税は、前年の所得に対して控除される税金ですでに1年間で納めなければいけない金額が決定しています。
会社員は特別徴収という方法で納税します。特別徴収とは1年間の納税額を12分割して納税する方法です。
普通徴収とは1年分を4回に分けて納税する方法で、個人事業主が納付する方法です。住民税額は、住民票がある市区町村より通知が届くため、記載されている金額を控除します。
控除後の額を支給額として支払う
すべての金額の控除が終わり、残った金額を支給額として従業員に支払います。
もし、会社からお金を借りており返済が必要な場合は、すべてを控除し終わってから控除します。
給与計算を自分でする場合の注意点
給与計算するにあたり、注意したい点は下記の3つです。
- 社会保険料は前月分を当月預かる
- 雇用保険料は役員は除外
- 会社への借入返済はすべての計算が終わってから控除する
社会保険料は前月分を当月預か
社会保険料は、前月分を当月の給与で控除する方法が「法定どおり」です。
たとえば新入社員を採用した1カ月目の給与では、社会保険料は徴収しません。2カ月目から1カ月目の保険料を控除します。
退職のときには、最終の給与から法定どおりの前月分と当月分を預かります。
雇用保険料は役員は除外
役員は、会社を経営している側になるため従業員ではありません。雇用保険は従業員を対象としているため、保険料の控除は必要ありません。
ただし、労災保険特別加入制度があり要件を満たせば労災保険のみ給付を受けることができます。
経営者として行う業務は対象外になるため、労災保険特別加入制度の加入には慎重に検討する必要があります。
会社への借入返済はすべての計算が終わってから控除する
レアケースにはなりますが、会社から従業員がお金を借りている場合、すべての給与計算が完了してから返済分を差引ます。
会社が従業員に給与として支給している額は、保険料をはじめとする、すべての金額を控除する前の金額です。先に返済を引いてしまうと保険料や税金の額に誤りが生じます。
まとめ:給与計算は手順を間違わなければ正しく計算できる
給与計算は、手順と必要書類を正しく収集すれば、自分でも簡単に計算できます。
給与額ベースにすべてを計算するわけではなく、表をみながら該当する金額を控除していくだけの簡単な計算です。
従業員の人数が増えれば、作業数が増え煩雑になるため、給与計算ソフトを導入するなど対策が必要です。
どのようなソフトが適しているか、よくわからない場合は、専門家に相談することで、自社にあったアドバイスが受けられます。
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