訪日外国人観光客の増加はとどまることを知りません。昨年は約2869万人を記録し、今年もそれを上回るペースで来日しているとみられています。それに伴い、地方自治体では多言語の観光マップや標識などの整備に追われています。
そうした観光インフラの整備財源とするべく、2002年に東京都は宿泊税(通称:ホテル税)を導入。都が先鞭をつけたホテル税は、ほかの地方自治体にも飛び火し、昨年2017年には大阪府が、さらに今年10月からは京都市でも導入が予定されています。北海道や福岡県、石川県金沢市もホテル税を設けることを検討しており、すでに全国的な広がりを見せています。
これらホテル税は、地方自治体がそれぞれ条例を制定して、課税・徴税しています。こうした税金は、法定外税と呼ばれます。ただ、各地でホテル税の導入が検討されるようになったため、47都道府県知事で組織する全国知事会はこのほど、ホテル税を法定税化するよう提言をまとめました。法定税化されると、全国一律にホテル税が導入されます。ホテルの利用者だけが払う税金のため“重税感”は薄いものの、ホテル税の法定税化は実質的に増税と見ることができます。
一部の自治体でのみ導入されていた法定外税が全国で影響を及ぼすケースは、ホテル税のほかにもあります。
山梨県、かつては導入断念、今回は県議会で議論
全国で法定外税の議論が盛んになったのは、2000年前後です。当時、たくさんの自治体で独自財源を模索する動きがありました。法定外税として検討されたものの、導入を断念したケースも多くあります。そのひとつが、山梨県のミネラルウォーター税です。
市販されているペットボトルの水の大半は、地下から採水したミネラルウォーターです。2017年における山梨県のミネラルウォーターの生産量は、約142万7000キロリットル。国内シェアは43.8%で、生産量は全国1位。あまり知られていませんが、山梨県はミネラルウォーターの生産量で常にトップを走り続けるミネラルウォーター大国なのです。
そんな山梨県がミネラルウォーターに課税しようと検討を始めたのは、2005年頃までさかのぼります。山梨県は庁内に検討委員会を設置し、有識者によって課税方式や税額などの議論を交わしました。
このとき検討されたミネラルウォーター税とは、採水事業者に1リットルあたり0.5円を課す内容でした。そうした事情から業界団体の反発は強く、導入は見送られます。しかし今年に入って、山梨県議会でミネラルウォーター税の導入議論が再燃。6月の議会では委員会を立ち上げて、議論が交わされる予定です。
過去の議論では、森林環境税の導入に
「以前のミネラルウォーター税は、あくまでも県庁内での検討です。今回は県議会で、議論は別物になります。現状、どういった税制になるのかまではわかりません」と話すのは山梨県総務部税務課の担当者です。
過去の検討会では、採水事業者への課税ではなく、個人・法人の県民税均等割に一定額を上乗せする森林環境税という形で県民一人ひとりに負担をお願いする案も出されました。この森林環境税については、山梨県は2012年に導入しています。
そのため、「ミネラルウォーター税の導入を再び議論するにしても、森林環境税のような県民に負担をお願いする税にはならないでしょう。採水事業者に課税する、以前のミネラルウォーター税の議論をベースに話し合いは進むと思います」(同)
地下水は、限りある資源です。山梨県から環境保全のためにミネラルウォーターに課税しようという考え方が出てくるのもうなずける話です。
いまやミネラルウォーターを飲用することは、決して珍しくありません。特に、一大消費地である東京都は、山梨県で生産されるミネラルウォーターに大きく依存しています。山梨県でミネラルウォーター税が導入されれば、当然ながら販売価格にも転嫁されるでしょう。ホテル税のように、もしかしたら追随する自治体が出てくる可能性もあります。
山梨県で議論されているミネラルウォーター税は、決して山梨県だけの問題ではないのです。
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