世界的に自動車用半導体の不足が深刻化する中、日本の半導体大手・ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で起きた火災が波紋を広げている。同工場は生産を停止。事態を重視した日本政府は台湾の半導体メーカーに異例の「SOS」を出し、代替生産を要請した。
米ブルームバーグ通信によると、世界の自動車業界は北米地域の寒さなどで車両向け半導体不足に悩まされている。特に新型コロナウイルス感染症のパンデミック(大流行)で室内にとどまる時間が長くなるにつれ、ノート型パソコン、タブレットおよび家電製品に対する需要が急増し、グローバルチップメーカーが車両用半導体チップの代わりに家電用半導体チップの生産を増やし、車両用半導体の不足現象が顕著になった。
このため、世界的な自動車メーカーは半導体不足で操業を次々と中断。トヨタはチェコ工場の操業を2週間中断すると発表した。米フォード自動車も今年2月、米国を襲った寒波で一部生産ラインの稼動を中断した。日産自動車も米テネシー州とミシシッピ州にある生産ラインの一部を中断し、メキシコにある工場は操業を中断した。ホンダ自動車も米国とカナダの一部工場が稼動中断になる可能性があるという。
自動車用半導体を主に手掛ける那珂工場のクリーンロームでは、3月19日未明に火災が発生。半導体製造装置が使用不可能になった。30日に記者会見したルネサスの柴田英利社長兼最高経営責任者(CEO)は1カ月以内に生産を再開する目標は達成できる可能性が高まっているとしながらも、「生産が完全に元に戻るには3~4カ月かかる」との見通しを示した。
火災による生産停止を受け、梶山弘志経済産業相は30日、台湾メーカーに半導体の代替生産に関する協力を要請していることを明らかにした。梶山経産相は「ルネサスが半導体製造装置を迅速に調達できるようにするため、経産省が複数の装置メーカーと協議している」と述べ、「工場の早急復旧に向け、経産省も一丸になって取り組む」と強調した。
ルネサスは自動車やデジタル家電などに使われるMCU市場で全世界の30%を占有している。ブルームバーグ通信は「世界第3位の車両向け半導体メーカーが操業を中止したことで、車両向け半導体の需給はさらに厳しくなる」と報道。ロイター通信も「自動車などの生産に影響が広がる可能性がある」と伝えた。台湾側の協力がどこまで得られるかは、今後の世界の自動車生産の動向を大きく左右しそうだ。
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