高齢化社会が進む今、より良い人生の最期を迎えようという「終活」が注目を集めつつあります。「エンディングノートや遺言を残しましょう」というのはよく聞く話です。しかし、ただ単に書き残せばいいというものではありません。ここでは、どんなケースだと遺言が無効になってしまうのか、失敗例から見ていきます。
自分が死んだ後、資産をどのような形で誰に引き継ぐのか……その希望を書き遺しておくのが遺言書です。故人の望みでもあるので、その内容は尊重され、遺産相続において大きな効力を持っています。とはいえ、その効力が「絶対」ではない、というのをご存じでしょうか。書き方次第では、遺言書そのものが無効になってしまう場合もあります。
せっかく遺言を書いても、それが無効になるというのはとても残念なことです。さらには、自分の大切な家族の間に無用なトラブルを発生させる原因にもなりかねません。
遺言書がきちんと効力を発揮するためには、法律で決められた形式・内容で書かれている必要があります。形式には大きく2種類があります。あらかじめ決まりに則ってきちんと書き残しておく「普通方式の遺言」と、事故や病気などで死期が迫っている緊急時に作られる「特別方式の遺言書」です。
特別方式の遺言書は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3パターンに分かれています。どれもあくまで「緊急時ゆえの特例」的なもので、後々、普通方式で遺言が残せるようになれば、一定期間を経て効力を失います。
内容も、「遺言で希望できること、できないこと」があります。もちろん主となるのは遺産相続に関することですが、そこでは、相続人の廃除(ただし相応の理由が必要)、相続分の指定などを行えます。また、遺産分割方法や相続財産の処分(遺贈)、遺言の執行に関する指定なども行えます。
逆に言えば、これまで書いたような「決まり」を逸脱している場合、その遺言書はうまく機能しない可能性があるということです。
一般的に遺言書と言えば「普通方式」が考えられますが、例えば「自筆証書遺言」の場合は「自筆であること、日付の記載があること、押印されていること」などが条件であり、パソコンで打ち込んだものなどは無効になってしまいます。
公証人立会いで、いわば「公的なお墨付き」のもと作成される「公正証書遺言」はより効力が確実で、自筆である必要もなくなりますが、その場合も、証人立会いの条件がきちんと守られていなかったりすれば当然無効です。自筆証書遺言と公正証書遺言のハイブリッドのような形式の「秘密証書遺言」の場合も、ほぼこれらに準じます。
作成時の形式だけでなく、内容も「遺言で遺せること」の範囲を逸脱していてはだめです。例えば、相続人には一定以上の相続分(遺留分)が認められていて、遺言は遺留分を侵害することはできません。また、遺言書の作成者が法的に「意思能力のない者」とされた場合や、内容が「公序良俗に反する」とされた場合も無効となります。
遺言書の効力をきちんと発揮させるには、条件がいろいろあります。心配な場合は、弁護士、行政書士などの専門家に相談してみることが重要です。
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