法人税にはさまざまな制度がありますが、その中でも「繰越欠損金」は確実に押さえておきたい基礎知識です。
この制度を正しく理解しておかないと、場合によっては数百万円単位の損が生じてしまいます。
そこで今回は、繰越欠損金の基本やルールを徹底的にまとめました。
※この記事は現役税理士の山口由美子監修のもと作成しております。
目次
- そもそも繰越欠損金とは?
- 繰越欠損金制度の利用の条件や期限・限度額は?
- 税務顧問を探している方はあいせ税理士法人まで
そもそも繰越欠損金とは?
そもそも欠損金とは、法人税を計算する時に、所得が赤字になってしまった場合の金額のことをさします。
青色申告をしている場合は、赤字になった場合欠損金を将来に繰り越すことができ、将来の所得と相殺してよいと認められています。
こちらの法人税法にのっとり繰り越している欠損金が繰越欠損金です。
繰越欠損金制度の利用条件や期限・限度額は?
法人にとって繰越控除は魅力的な制度ですが、すべての欠損金を繰り越せるわけではありません。繰越欠損金にはさまざまな要件が設けられているため、節税につなげたいのであれば正しいルールを理解しておくことが重要です。
そこで以下では、繰越欠損金の基本的なルールをまとめました。
繰越欠損金の3つの利用条件
法人が繰越欠損金を利用する場合は、以下の3つの条件を満たすことが必要になります。
○繰越欠損金の3つの利用条件(法人)
・欠損金が生じた事業年度において、青色申告により確定申告をしている
・その後の事業年度に関しても、連続して確定申告をしている
・帳簿書類等を保存している
そもそも繰越控除は、欠損金が生じた事業年度で「青色申告」を済ませておかないと利用できません。また、その欠損金を繰り越す事業年度まで、連続して確定申告をすること(※白色申告でも可)も条件に含まれます。
つまり、青色申告によって毎年確定申告をしている法人であれば、ほとんどのケースで繰越控除を利用できます。ただし、確定申告の際に作成した「帳簿書類の保存」も求められるため、その点は忘れないようにしましょう。
欠損金の繰越期間に関するルール
欠損金の繰越期間については、法改正によってルールが度々変更されているため要注意です。以下でまとめた通り、「欠損金が発生した事業年度」によって繰越できる期間には違いがあります。
欠損金が発生した事業年度 繰越できる期間
平成13年3月31日以前 5年間
平成13年4月~平成20年3月31日以前 7年間
平成20年4月~平成30年3月31日以前 9年間
平成30年4月以降 10年間
これまで頻繁に法改正されている経緯を踏まえると、今後に関しても繰越期間が変更される可能性は十分に考えられます。そのため、税制が改正されたタイミングで、繰越欠損金のルールを見直していくことが望ましいです。
繰越欠損金の金額に関するルール
以下のように、繰越欠損金には「上限金額」が設けられている点もしっかりと理解しておきましょう。
欠損金が発生した事業年度 資本金1億円超の企業 資本金1億円以下の企業
平成27年3月31日以前 欠損金の80% 欠損金の100%
平成27年4月~平成29年3月31日以前 欠損金の65% 欠損金の100%
平成29年4月以降 欠損金の50% 欠損金の100%
上記を見て分かる通り、資本金1億円超の大企業については、繰越できる欠損金の割合が年々減ってきています。一方で、中小企業は優遇されている状況が続いており、資本金1億円以下の企業はすべての欠損金を繰越控除することが認められています。
ただし、上限金額についても今後の法改正によって変わる可能性があるため、法改正の内容はその都度きちんと確認しておくことが重要です。
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