将来発生する相続税を節税するためには、生前贈与の検討が必要です。
生前贈与は暦年贈与と相続時精算課税制度が代表的です。
相続時精算課税制度は、令和5年税制改正で基礎控除が新設されます。今回は、暦年贈与をはじめ、現行の相続時精算課税制度と改正後の相続時精算課税制度について解説します。
贈与について知りたい方や、贈与のタイミングについて検討している方は参考にしてください。
※この記事は現役税理士の木住野祐希監修のもと作成しております。
暦年贈与とは1月から12月までに贈与する制度
暦年贈与とは、毎年1月から12月までの間に贈与する制度です。
110万円まで贈与税の基礎控除枠の範囲であれば、現金や株式の贈与を実施しても税額は課されず、贈与税の申告は不要です。
将来発生する相続税対策として活用されます。贈与税の基礎控除枠の範囲で対策する場合には、長期的な計画のもと生前贈与を継続します。
相続時精算課税とは複数年にわたり2,500万円の特別控除が利用できる制度
相続時精算課税は、2,500万円の特別控除枠を使い切るまで、残額を翌年以降へ繰り越して適用できる制度です。
60歳以上の父母もしくは祖父母から18歳以上の子や孫へ財産を贈与する制度です。
相続が発生した場合に、相続時精算課税を適用して受け取った贈与財産の価額と、相続や遺贈で取得した財産の価額を合計した金額を基準に相続税を計算し、すでに納付している贈与税相当額を控除します。贈与した財産を持ち戻して相続税の計算をするため「相続時の時価-贈与時の時価=相続税の節税額」となります。
また、持ち戻しの基準は下記の3つで判定します。
- 生前贈与である
- なくなる3年前までに実施された生前贈与である
- 相続時精算課税を適用した贈与である
税制改正で相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が新設される
現行法と改正法で、全く異なる点が110万円の基礎控除です。現時点での改正案では、110万円までであれば、申告を必要としません。
現行法では、特別控除を適用する際には税額が発生していなくても申告書の提出が必要でした。
2023年に相続時精算課税を適用した場合には、現行法での適用になるため申告書の提出は必要です。
現行法と改正後の比較と注意点
持ち戻しの対象期間は現行なくなる前3年以内ですが、改正案ではなくなる前7年に延長されます。
そのほか具体例を挙げて解説します。
前提:60歳の父から18歳の子に相続時精算課税制度を適用して8,000万円の贈与をした場合
(特別控除額は2,500万円、2,500万円を超える部分の税率は一律20%)
現行の相続時精算課税による贈与 | (課税価格ー特別控除額)×税率20%=贈与税額 |
改正案である2024年1月1日以降の相続時精算課税による贈与 |
(課税価格ー基礎控除額ー特別控除額)×税率20% =贈与税額 ※基礎控除額は110万円 |
上記の計算式にあてはめた場合、下記のような計算式が成り立ちます。
現行法の場合
(8,000万円-2,500万円)×20%=1,100万円(贈与税額)
改正案の場合
(8,000万円-110万円-2,500万円)×20%=1,078万円(贈与税額)
現行法と改正案での贈与税額の差額は22万円です。改正案には基礎控除の110万円があるため、税額を低く抑えることができます。
注意点は、2023年の相続時精算課税は現行法で計算されるため、110万円の基礎控除枠はありません。
まとめ
令和5年税制改正により、相続時精算課税に基礎控除枠110万円が新設されます。
これから相続時精算課税の適用を検討している場合には、状況によりますが改正後の相続時精算課税を適応する方が、相続税の節税につながります。
贈与税は、贈与のタイミングや贈与する財産を検討する必要があるため、少しでも疑問や不安がある場合には、専門家である税理士に相談することが大切です。
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